北海道でエアコンがカビる理由|夏が短いのに洗浄が必要になる仕組み

気象庁の平年値(1991〜2020年)によると、札幌で最高気温が30℃を超える「真夏日」は年間8.6日です。25℃以上の夏日でも54.6日。本州の主要都市と比べれば、冷房を本気で回す期間は圧倒的に短いことになります。

そのため、こう考える方が多くいらっしゃいます。「うちは夏の1か月くらいしか使わないから、掃除なんて必要ないでしょう」と。

ところが実際に分解してみると、購入から2〜3年、しかも夏しか使っていない機種の送風ファンに、黒い点がびっしり付いていることがあります。運転時間で言えば本州の家庭の何分の1かのはずなのに、です。

なぜそうなるのか。エアコンの内部で何が起きているのかを、メーカー修理の現場で分解と修理を繰り返してきた立場から説明します。

使用期間が短いことは、カビにとってはむしろ有利に働く

エアコンが冷房運転をしているとき、内部の熱交換器(アルミの薄い板が並んだ部分)はキンキンに冷やされています。そこへ部屋の湿った空気が触れると、冷たい飲み物のグラスの外側と同じように結露します。冷房とは、この結露によって空気中の水分を奪う仕組みそのものです。

つまり冷房を止めた直後のエアコン内部は、必ず濡れています。

問題はここからです。

本州であれば、梅雨入りの6月から残暑の9月まで、断続的に冷房を使い続けます。濡れては送風で乾き、また濡れる。内部が乾く機会が何度も訪れます。

一方、道内では8月下旬に「今年はもう使わないな」と電源を落とし、そのまま翌年7月まで放置されるケースがほとんどです。最後に濡れた状態のまま、10か月以上、閉め切られた室内機の中で放置される。これが北海道のエアコンに起きていることです。

カビが増える条件は、水分・温度・栄養(ホコリ)の3つです。このうち、最も強く効くのが水分です。運転時間の短さはホコリの量には効きますが、水分については逆に働くことがあります。「短い期間しか使っていないから汚れていないはず」という感覚は、ホコリについては当たっていて、カビについては当たらない場合がある、ということです。

分解して分かる、汚れが溜まる順番

室内機の内部は、空気が通る順に汚れていきます。実際に分解したときに、どこがどう汚れているかを整理すると次のようになります。

部位汚れ方自分で届くか
フィルター乾いたホコリが網目に乗る届く(掃除機で吸える)
熱交換器(アルミフィン)フィンの隙間にホコリが詰まる。結露で湿る表面のみ。奥は届かない
送風ファン(筒状の羽根)湿ったホコリが羽根1枚ずつに固着し、黒い斑点になるほぼ届かない
ドレンパン(受け皿)結露水が溜まり、流れきらない水にカビが育つ奥までは届かない

市販のエアコン洗浄スプレーが届くのは、基本的に熱交換器の表面までです。臭いの発生源として実際に多い送風ファンとドレンパンには、ほとんど届きません。「スプレーしたのに臭いが取れない」というご相談が多いのは、洗った場所と臭いの出どころが違っているためです。

さらに気をつけたいのが、溶かした汚れの行き先です。洗浄剤で浮かせた汚れは、流しきるだけの水量がなければ内部に留まります。ドレンパンの底に落ちて溜まり、すすぎ切れなかった洗浄剤の成分ごと残ることもあります。「掃除したのに、かえって臭いが強くなった」というご相談も、毎年いくつかいただいています。

北海道ならではの、3つの事情

1. 冬に加湿する家が多い

道内の住宅は気密性・断熱性が高く、暖房も強く効きます。その分だけ室内が乾燥しやすく、加湿器を使うご家庭も多くあります。エアコンを使っていない冬の間も、室内機の内部には湿った空気が流れ込んでいます。「使っていないから乾いているはず」とは限りません。

2. 暖房でも使う家が増えている

寒冷地向けエアコンの普及が進み、日本エアコンクリーニング協会は道内の普及率が「50%に届く勢い」で伸びているとしています。冷房専用だった時代と違い、通年で運転する機種が増えました。暖房運転では結露しないためカビは増えにくいのですが、ホコリを吸い込む時間そのものは大きく増えます。夏だけ使う前提で書かれた本州向けの記事は、この点が当てはまりません。

3. ストーブの油分が、高気密の室内に滞留する

灯油ストーブやFF式暖房機を併用しているお宅では、燃焼によって生じた細かな油分が空気中に放出されます。

問題は、それが外へ逃げないことです。先ほど触れたとおり道内の住宅は寒さを防ぐために気密性が非常に高く、窓を開けた換気の頻度もどうしても少なくなりがちです。放出された微細な油分は外に出ていかず、室内に充満して停滞します。

この油分が部屋じゅうのホコリと結びつくと、乾いたホコリとはまったく別の、ベタベタして落ちにくい汚れに変わります。テレビの裏、カーテンレール、棚の上——拭いたときに指に残る、あの黒っぽくベタつくホコリです。心当たりのある方も多いのではないでしょうか。

エアコンは、その空気をずっと吸い続けています。

家具の上に積もったものは拭けば取れますが、エアコンの内部に入り込んだものはそうはいきません。熱交換器のフィンの隙間や、送風ファンの羽根1枚ずつに、この油を含んだホコリが固着します。台所に近い場所に設置されていれば、調理由来の油分も加わります。こうなるとフィルターの掃除機がけでは取れず、洗浄でもアルカリ性の洗浄剤と十分なすすぎが必要になります。

洗浄で直るもの、直らないもの

kitanoAir はエアコン修理を本業としています。だからこそ、洗浄では解決しない症状をはっきりお伝えできます。「洗浄を頼んだのに結局冷えないままで、あらためて修理費がかかった」という事態を避けていただくために、目安を整理しました。

症状洗浄での改善原因として多いもの
カビ臭い・すっぱい臭い見込めます送風ファンとドレンパンのカビ
風が弱くなった見込めますフィルターと熱交換器の目詰まり、ファンへの汚れの固着
水がポタポタ落ちる状態によりますドレンの詰まりなら改善。受け皿の割れや配管の勾配不良なら修理
冷えない・暖まらない見込みにくいです冷媒(ガス)不足、圧縮機や制御基板の不具合
室外機から異音がする見込めませんファンモーターの軸受、圧縮機
数年かけて徐々に効きが落ちた状態によります目詰まりなら改善。冷媒漏れなら修理

いずれも実際の状態によります。kitanoAir では作業前に症状を伺い、洗浄で改善が見込みにくいと判断した場合は、その時点でお伝えします。洗ってから「直りませんでした」とは言いません。

頻度の目安は「使った時間」ではなく「止め方」で決まる

一般には1〜2年に1回と言われます。ただしこの目安は、冷房を長期間使う地域を前提にしたものです。北海道では運転時間が短いぶん、シーズンの終わり方のほうが状態を左右します。

  • 冷房を止めるたびに送風運転(または内部クリーン機能)で1〜2時間乾かしている … 2〜3年に1回が目安
  • シーズン最後に電源を切っただけ … 1〜2年に1回が目安
  • ペットがいる/室内で喫煙する/飲食店・美容室などの店舗 … 毎年が目安

もっとも分かりやすいサインは、実際には日数ではありません。運転を始めた最初の5分に臭いが出る、去年より風が弱い気がする。この2つに心当たりがあれば、年数に関係なく一度見てみる価値があります。

費用をかけずにできる予防として、いちばん効果があるのは「シーズン最後に送風運転で内部を乾かしてから電源を落とす」ことです。内部クリーン機能が付いていればそれで構いません。濡れたまま10か月放置するのと、乾かしてから放置するのとでは、翌年開けたときの状態が変わります。

業者に頼むとき、確認しておきたい3つのこと

エアコンクリーニングは料金の幅が大きいサービスです。その差がどこから来ているのかは、次の3点を聞けばおおよそ分かります。

  1. 「送風ファンとドレンパンまで、洗浄剤と水が届きますか」
    臭いの主な発生源はこの2か所です。熱交換器の表面に吹き付けるだけの洗浄では届かないことがあります。料金差の多くは、この工程の有無から生まれます。
  2. 「電装部(制御基板)の養生はどうしますか」
    高圧の水をかける作業です。基板やモーターに水が入れば故障します。どこを外し、どこをどう防水するのかを具体的に答えられるかどうかが、分解に慣れているかどうかの分かれ目です。
  3. 「すすぎにはどれくらい水を使いますか」
    洗浄剤で汚れを浮かせたあと、それを流しきる工程が仕上がりを決めます。すすぎが足りないと、洗浄剤とカビが混ざったものが内部に残ります。

もうひとつ、機種の年式も関係します。10年以上使われた機種は樹脂部品が硬化していて、力任せに外そうとすると割れます。どこにどれだけ力をかけてよいかの判断は、分解と組み立てを何度も繰り返した経験からしか身につきません。築年数の経った住宅が多い小樽や余市では、この判断が必要になる機種に実際によく出会います。

「お掃除機能付きだから、中もきれい」ではありません

最も多い誤解がこれです。フィルター自動お掃除機能が掃除しているのは、フィルターだけです。ホコリをブラシでかき取り、ダストボックスに溜めるか、屋外へ排出する。やっているのはそこまでです。

前の章で見たとおり、臭いの発生源として多いのは送風ファンとドレンパンでした。自動お掃除機能は、そのどちらにも触れていません。むしろフィルターが常にきれいな分、「掃除しなくていい機種」だと思われて何年も放置され、内部だけが汚れ続けている——という状態で伺うことがよくあります。

料金が高くなるのは、部品点数が違うから

お掃除機能付きの洗浄料金が高いのは、洗う面積が広いからではありません。洗う場所にたどり着くまでの分解の手間が違うためです。

通常タイプお掃除機能付き
kitanoAir の料金(1台目)9,800円20,000円
作業時間の目安1.5〜2時間2.5〜3時間
分解する主な部品前面パネル、ルーバー、外装左記+フィルター自動清掃ユニット一式

自動清掃ユニットは、駆動用のモーターやセンサーを持つ独立した機構です。取り外すには配線のコネクタを何本も抜く必要があり、戻すときに1本でも挿し忘れたり順番を間違えたりすれば、お掃除機能が動かなくなります。本体は動いているのにお掃除機能だけ効かない、という機種を点検すると、過去の洗浄時の組み間違いが原因だった、ということも実際にあります。

壁掛けエアコンの室内機を分解し、基板につながるコネクタを手に持っている様子
基板には多くのコネクタがつながっています。組み立てのときの挿し忘れ・挿し間違いが、お掃除機能だけ動かない原因になることがあります。

お掃除機能が既に故障している状態で洗浄のご依頼をいただくこともあります。その場合は分解した時点で分かりますので、直せるものか、部品供給が終わっていて直せないものかを、その場でお伝えします。修理を本業にしているぶん、ここは切り分けができます。

当日の流れと、事前のご準備

エアコンクリーニングは、他人を家に上げて2〜3時間作業してもらうサービスです。何が起きるのか分かっていたほうが頼みやすいと思いますので、当日の流れを書いておきます。

  1. 現物の確認と、金額の確定(5〜10分)
    型番と、お掃除機能の有無を確認します。ここで確定金額をお伝えします。この時点でのキャンセルも承ります。
  2. 養生(15分ほど)
    エアコンの下と壁、床を専用のシートで覆います。洗浄した水を受けるため、本体の周囲をぐるりと囲む形になります。
  3. 分解
    外装、ルーバー、(お掃除機能付きなら)自動清掃ユニットを外します。電装部は水がかからないよう防水処理をします。
  4. 高圧洗浄
    熱交換器、送風ファン、ドレンパンを洗浄剤と高圧の水で洗います。汚れの落ち方はここで見ていただけます。
  5. すすぎと乾燥
    洗浄剤が残らないよう流しきります。
  6. 組み立てと試運転
    元どおり組み、実際に運転して風量・排水・異音を確認します。
  7. 片付け
    養生を外し、周囲を拭き上げてお引き渡しです。
壁掛けエアコンの室内機の前面を外し、制御基板を確認している様子
前面を外して、制御基板と配線を確認しているところ。洗浄の前に、水がかからないよう電装部を防水します。

お客様にご用意いただきたいもの

  • 水道:洗浄機に使わせていただきます。屋外の水栓か、浴室・洗面所をお借りします
  • 電源:洗浄機用にコンセントを1口お借りします
  • エアコンの下のスペース:養生を広げるため、直下に家具や家電がある場合は少し動かしていただけると助かります(重いものは私どもで動かします)
  • 駐車スペース:なければ近隣のコインパーキングを使いますが、その費用を請求することはありません

立ち会いは、最初の金額確認と最後の引き渡しのときだけで構いません。作業中はずっと見ていていただく必要はないので、在宅でご用事をなさっていて問題ありません。

まとめ

  • 札幌の真夏日は年間8.6日。運転時間は本州よりはるかに短い
  • それでもカビるのは、濡れたまま10か月放置される使い方になるため
  • 臭いの主な発生源は送風ファンとドレンパンで、市販スプレーはそこまで届きにくい
  • 北海道特有の事情は、冬の加湿・暖房兼用・高気密の室内に滞留するストーブ由来の油分
  • 洗浄で直るのは臭いと風量。冷えない・異音は修理の領域
  • 頻度は年数より「シーズンの終わりに乾かしたかどうか」で判断する
  • お掃除機能が掃除しているのはフィルターだけ。送風ファンとドレンパンは対象外

札幌・小樽・後志のエアコンクリーニングは kitanoAir へ

kitanoAir は北海道余市郡余市町を拠点に、札幌市・小樽市・余市町・倶知安町・ニセコ町など道央・後志エリアでエアコンの洗浄と修理を行っています。エアコン修理を本業としているため、洗浄で改善する症状なのか、修理や買い替えを検討すべき状態なのかを、その場で切り分けてお伝えできます。

  • ダイキン工業の業務委託と日立の特約店で、メーカー修理を担ってきた技術者が作業します(空調設備の現場歴7年以上)
  • 第二種電気工事士/第二種冷媒フロン類取扱技術者/ガス溶接技能講習修了
  • 対応エリア内は出張費・駐車場代とも無料
  • 受付:8:00〜20:00(年中無休/20時以降はLINEのみ受付)
  • 電話 070-9136-3107/LINEで相談(写真を送っていただければ、おおよその見立てをお返しします)

料金や作業の流れはエアコンクリーニングのページにまとめています。

※ ダイキン工業は業務委託、日立は特約店での勤務です。現在、各メーカーとの資本関係・代理店契約はありません。

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出典